(2008 Sep 14)
日本で法的に認められていない安楽死(もしくは尊厳死)は、オーストラリアでも違法です。
原因不明の難病であるクローン病を患っていると15歳で診断され、その後結腸癌にも苦しめられたAngelique Flowers(アンジェリーク・フラワーズ)さんは、モルヒネや鎮痛剤等を服用していたものの症状が悪化し、先月の8月19日に亡くなりました。31歳でした。
アンジェリークさんの最期は「尊厳」とは程遠く、「腸の機能障害のために嘔吐し続け、悶絶しながら死んでいった」と彼女のあごの下にボウルをかまえて嘔吐物を受け止めながら、妹が苦しんで死んでいくのを目の当たりにした兄のダミアンさんは言っています。
また、彼は「アンジェリークは死ぬのを恐れてはいなかった。どんな形で死ぬかを恐れていた。」とも話しています。
アンジェリークさんは亡くなる数ヶ月前に自分のメッセージを録画していましたが、その中には首相のケビンラッドへのメッセージも残されていました。
「私はストイックな人間ではありません。不運や苦しみを乗り越える人々には心から頭が下がります。しかし私の病気は本当によくならず、この生活から得るものは何もありません。
16年間クローン病と結腸癌との闘病生活を送ってきた今、私が望むのは痛みのない安らかな死のみです。そうすれば、家族や友人など愛する人たちに別れを告げて死ぬことができます。
しかし、安楽死はオーストラリアで違法ですから私のこの願いは叶いません。
アボリジニ(オーストラリア先住民族)に苦難を強いた今までのオーストラリア政府の行いに対して謝罪ができる良心、そして京都議定書を批准する誠実さをもつケビンラッド首相には、人間の安楽死を合法なものにして頂きたいと切に願っています。
私の人生は安楽死で死ねる動物以下です。私は生きることも死ぬことも奪われました。」
オーストラリアでは、北部準州で1996年に世界で初めて安楽死法が可決されましたが、その後連邦政府によって否決されてしまいました。
(オーストラリアには大きく分けて6つの州と3つの準州がある。準州は自治が認められているので法律の可決等できるが、連邦政府は準州の決定を覆すことができるシステムになっている。)
偶然かわかりませんが、今期の連邦政府議会では、提出された安楽死関連の議員立法法案に関しての議論が活発になる見込みで、北部準州の安楽死法を再度合法にするか否かの投票が会期中に行われるようです。